宇宙ニュース要約: 2025年11月12日

space.com

インド、有人宇宙船「ガガニヤーン」のパラシュート降下試験に成功

インド宇宙研究機関（ISRO）は2025年11月3日、開発中の有人宇宙船「ガガニヤーン」の乗員モジュール用パラシュートシステムのドロップテストを実施しました。試験では、IL-76輸送機から重量約7トンのダミーカプセルを高度2.5kmで投下し、複数のパラシュートを展開させて安全に着水させることに成功。これにより、システムの設計の堅牢性が検証されました。ISROは今後、無人での飛行試験を経て、2027年第1四半期にも有人宇宙飛行を目指しています。

www.arabianbusiness.com

UAE、衛星利用から探査主導へ 宇宙開発戦略を転換

アラブ首長国連邦（UAE）は、初の商用衛星打ち上げから25年を経て、宇宙開発戦略を大きく転換しています。これまでの衛星利用中心から、火星や月、さらには小惑星帯の探査を自国で主導する能力の構築へと移行しており、国内での設計・開発・運用体制を強化しています。長期的な目標として、2050年までの有人火星探査準備を掲げています。

english.news.cn

中国の有人宇宙船「神舟20号」、デブリ衝突の疑いで帰還を延期・評価中

中国の有人宇宙船「神舟20号」の地球への帰還が、微小な宇宙デブリに衝突した疑いがあるため延期され、継続的な評価が行われています。中国有人宇宙局（CMSA）は緊急対応手順を発動し、ロボットアームによる機体点検やシミュレーション、地上での回収訓練などを実施しています。乗組員の健康状態は良好と報告されていますが、耐熱シールドやパラシュートへの損傷が懸念されており、代替機の緊急打ち上げも想定されています。帰還に関するNOTAM（航空情報）も発表されています。

space.com

アポロ計画の礎「ジェミニ計画」の重要性を掘り下げた新刊が登場

ジェフリー・クルーガー氏による新著『Gemini: Stepping Stone to the Moon, the Untold Story』が2025年11月11日に刊行されました。本書は、アポロ計画による月面着陸の成功に不可欠であったにもかかわらず、これまで過小評価されがちだった1965年から66年にかけての有人宇宙飛行「ジェミニ計画」の功績に焦点を当て、船外活動やランデブー・ドッキング技術の確立など、その重要性を詳述しています。

sorae.info

筑波大発ベンチャー、火星探査飛行機の高高度実験機をJAXAに納入

筑波大学発のスタートアップ企業AeroFlexは、将来の火星探査を目指す飛行機の高高度実験機を開発し、JAXAに納入しました。同社はJAXAと共同で、2026年以降に気球を使って機体を成層圏約30kmまで上昇させ、そこから滑空させる飛行実験を計画しています。この実験で得られるデータは、大気が希薄な火星での飛行技術確立に役立てられます。

uchubiz.com

中国、年間打ち上げ回数記録を更新するも民間ロケット1機が失敗

中国は11月9日と10日に政府系および民間のロケット計4機を打ち上げ、2025年の年間打ち上げ回数を72回とし、過去の記録を更新しました。中国航天科技集団（CASC）の長征11号Hと長征12号、および民間企業CAS Spaceの力箭1号は打ち上げに成功しましたが、同じく民間企業の星河動力（Galactic Energy）が開発した谷神星1号は、上段の異常により搭載していた衛星3機の軌道投入に失敗しました。

www.nikkei.com

英国の宇宙スタートアップBlue Skies Space、SpaceXで初の衛星打ち上げへ

英国の宇宙スタートアップ企業、ブルー・スカイズ・スペース（BSS）は、同社初となる衛星をSpaceXのロケットに相乗りする形で打ち上げる予定です。BSSは、自社衛星で収集した宇宙関連データを、サブスクリプションモデルで企業や研究機関に販売するビジネスを目指しています。

www.nasaspaceflight.com

Blue Originの新型ロケット「New Glenn」、太陽活動活発化で打ち上げ延期

Blue Originが計画していた新型ロケット「New Glenn」の初打ち上げが延期されました。当初は悪天候と地上設備の問題が原因とされていましたが、その後、NASAは太陽活動が非常に活発化していることを理由に、搭載されている火星探査機「ESCAPADE」への影響を考慮して延期を決定しました。新たな打ち上げ日時は、宇宙天気予報と射場の状況を評価して決定される予定です。

uchubiz.com

微小重力下での3Dバイオプリンティングに成功、宇宙での医療応用に道

スイスのチューリッヒ工科大学（ETH Zurich）の研究チームが、航空機の放物線飛行によって作り出した微小重力環境下で、人間の筋肉組織を3Dプリントすることに成功しました。地上では重力の影響で困難な複雑な生体組織の作製が、宇宙空間では可能になる可能性を示したもので、将来の長期宇宙滞在における飛行士の医療や、地球上での移植用臓器作製への応用が期待されます。

space.com

SpaceX、Starlink 6-87ミッションでフロリダの年間打ち上げ記録を更新

SpaceXは2025年11月10日、ケープカナベラル宇宙軍基地からFalcon 9ロケットでスターリンク衛星29機を打ち上げました。これにより、フロリダのスペースコーストからの年間軌道打ち上げ回数は94回となり、2024年の93回という記録を更新しました。打ち上げは政府閉鎖による航空管制官不足の影響で午後10時以降に延期されましたが、成功裏に完了しました。使用された第1段ブースターは3回目の飛行で、大西洋上の無人船「Just Read the Instructions」への着陸に成功しました。

www.cnn.com

NASAの組織再編を提案する流出文書『Project Athena』が波紋

ポラリス計画を率いる億万長者ジェレッド・アイザックマン氏が作成したとされる文書『Project Athena』が流出し、その内容が波紋を呼んでいます。この文書は、核電気推進技術の開発促進や「Olympus」と名付けられた火星探査計画、さらにはNASAの拠点や研究予算、職員に大きな影響を与える大規模な組織再編を提案しており、政治的な駆け引きの一環としてリークされた可能性が指摘されています。

www.chinadaily.com.cn

中国、複数の射場で新型ロケットの打ち上げ準備を進行

中国では、複数の射場で新型ロケットの打ち上げに向けた準備が活発化しています。酒泉衛星発射センターでは、民間企業「藍箭航天」が開発したステンレス製の再利用型メタロックスロケット「ZQ-3」が初飛行の準備を進めています。また、海南島の文昌商業宇宙飛行場では「長征8号A」ロケットが発射台へ移動し、山東省の海洋宇宙港では「長征12号」用の地上設備の建設が進められています。

www.satellitetoday.com

Rocket Lab、再利用ロケット「Neutron」の初飛行を2026年に延期

Rocket Labは、開発中の再利用型ロケット「Neutron」の初飛行を、当初予定の2025年から2026年中頃に延期すると発表しました。同社は、地上での徹底的な試験を通じてリスクを低減する方針を採っており、初号機は2026年第1四半期にバージニア州のワロップス射場に搬入される予定です。同社の第3四半期の業績は好調で、開発費は増加するものの、十分な現金を保有していると報告されています。

uchubiz.com

太陽で今年最大級のX5.1フレアが発生、地球への影響を警戒

太陽の黒点活動領域AR4274で、11月9日から11日にかけてXクラスの大規模太陽フレアが複数回発生しました。特に11日に発生したX5.1級のフレアは2025年で最も強力なもので、アフリカやヨーロッパで短波無線の通信障害（デリンジャー現象）を引き起こしました。これらのフレアに伴い放出されたコロナ質量放出（CME）が地球に到達した場合、G3レベルの強力な磁気嵐を発生させ、広範囲でのオーロラ観測や、GNSS測位誤差の増大、衛星運用への影響などが懸念されています。

uchubiz.com

中国、国家送電網企業による衛星ブロードバンド網の構築を開始

中国は、長征12号ロケットを用いて、国営の電力会社である「国家電網」が計画する衛星ブロードバンドコンステレーションの最初の衛星を低軌道に投入しました。これは、中国が国家主導で進める衛星インターネット網構築の一環であり、関連施設として山東省の海洋宇宙港の建設も進められています。

space.com

彗星レモン（C/2025 A6）の観測、衛星コンステレーションが天体写真に影響

最近発見された彗星レモン（C/2025 A6）が観測シーズンを迎えていますが、その写真には多数の人工衛星の軌跡が写り込んでおり、天体観測や写真撮影における新たな課題を浮き彫りにしています。特にスターリンク衛星をはじめとする低軌道衛星コンステレーションの急増により、クリーンな天体画像を得ることが困難になっており、天文写真家は画像処理技術を駆使して衛星の軌跡を除去する対応を迫られています。

europeanspaceflight.com

ドイツの宇宙企業OHB、欧州の発射インフラ事業を統合する新会社を設立

ドイツの航空宇宙企業OHBは、欧州におけるロケット発射インフラ関連事業を統合するため、新会社「欧州宇宙港会社」をブレーメンに設立しました。新会社は、ドイツ沿岸で計画されている浮体式海上発射場の開発や、フランス領ギアナの宇宙港におけるアリアンロケット用発射施設の整備などに関与し、欧州の宇宙輸送能力の強化を目指します。

www.satellitetoday.com

欧州、防衛力強化に向け軍用衛星通信(satcom)の統一枠組みを模索

欧州の防衛関連リーダーたちは、安全保障環境の変化に対応するため、統一された予算と共通の技術基準に基づく欧州独自の軍用衛星通信（satcom）枠組みの構築を求めています。欧州宇宙機関（ESA）は、低軌道（LEO）衛星の大量生産能力の不足や標準化の遅れを指摘しており、Starlinkのような米国の巨大コンステレーションに対抗するため、欧州内の連携と主権の確保が急務であるとの認識が広がっています。

aviationweek.com

Artemis計画：月探査機オリオン用の欧州製サービスモジュール4号機が出荷準備完了

NASAの月探査計画「アルテミス」で使用されるオリオン宇宙船の欧州製サービスモジュール4号機（ESM-4）が、ドイツのブレーメンにあるAirbusの施設で統合を完了し、米国のケネディ宇宙センターへの出荷準備が整いました。ESMはオリオン宇宙船の推進力、電力、水、酸素などを供給する重要な部分です。ESM-4は、将来の月周回宇宙ステーション「ゲートウェイ」へ居住モジュールを輸送する「アルテミスIV」ミッションで使われる予定です。

breakingdefense.com

政府閉鎖の影響で米宇宙開発防衛庁(SDA)のミサイル追跡衛星の契約が延期

米国の政府機関閉鎖に伴い、宇宙開発防衛庁（SDA）が計画していた「Tranche 3」追跡衛星群の契約発注が延期される見通しとなりました。この衛星群は弾道ミサイルや極超音速ミサイルを宇宙から監視する上で重要な役割を担いますが、研究開発・試験・評価（RDT&E）予算約7億ドルが兵員の給与支払いに流用されたため、契約が不透明な状況となっています。

SpaceX、複数のStarlink衛星打ち上げミッションのライブ配信を告知

SpaceXは、公式X（旧Twitter）アカウントを通じて、今後予定されている複数のスターリンク衛星打ち上げミッションのライブ配信を告知しました。配信は11月15日、19日、22日などに予定されており、視聴者はX上でロケットの打ち上げから衛星分離までの様子をリアルタイムで見ることができます。

europeanspaceflight.com

米国務省、EUの新宇宙法案「EU Space Act」が米企業に不当な負担を課すと懸念表明

米国国務省は、欧州連合（EU）が提案している新たな宇宙法案「EU Space Act」について、米国の宇宙企業に「不当な規制負担」を課し、協力関係を損なう可能性があるとして、公式に反論しました。特に、環境規制や衛星の明るさに関する制限が、SpaceXのスターリンクのような大規模衛星コンステレーションを運用する米国企業にとってコスト増につながり、不利に働くと指摘しています。

spacenews.com

NASA深宇宙通信網の大型アンテナが損傷し運用停止、探査機との通信に影響懸念

NASAの探査機との通信を担う深宇宙通信網（DSN）の一部である、カリフォルニア州ゴールドストーンの直径70mの大型パラボラアンテナ「DSS-14」が、9月に発生した過回転事故により配線などを損傷し、運用を停止していることが明らかになりました。復旧時期は未定で、ボイジャーや他の深宇宙探査ミッションとの通信を担うDSN全体の運用負荷がさらに深刻化することが懸念されています。

Astra

米ベテランズデー、SpaceXやBlue Originなど宇宙企業が退役軍人に感謝を表明

11月11日の米国の「ベテランズデー（退役軍人の日）」に際し、SpaceX、Blue Origin、Rocket Lab、Astra、Firefly Aerospaceといった米国の主要な宇宙企業が、自社で働く従業員を含むすべての退役軍人に対し、SNSなどを通じて感謝と敬意を表明しました。各社は、退役軍人が持つ規律やミッションへの献身が、困難な宇宙開発の現場で大きな力となっていることを強調しました。

www.jaxa.jp

JAXA、H3ロケット8号機による「みちびき5号機」を2025年12月7日に打ち上げ予定

宇宙航空研究開発機構（JAXA）は、H3ロケット8号機を用いて準天頂衛星「みちびき5号機」を2025年12月7日の11時30分から12時30分（日本時間）の間に、種子島宇宙センターから打ち上げることを発表しました。予備期間は2025年12月8日から2026年1月31日まで設定されています。

news.web.nhk

大西卓哉宇宙飛行士がISS長期滞在ミッションを終え、文科大臣表敬と報告会を実施

今年8月に国際宇宙ステーション（ISS）での長期滞在ミッションを終えて帰還したJAXAの大西卓哉宇宙飛行士が、松本文部科学大臣を表敬訪問し、ミッションの達成を報告しました。また、2025年11月14日には、ISSでの活動や科学実験の成果を一般向けに報告する会が開催され、JAXAの公式YouTubeチャンネルでライブ配信される予定です。

www.nasaspaceflight.com

SpaceX、Starshipの生産・発射施設をテキサスとフロリダで大規模拡張

SpaceXは、テキサス州のStarbaseにおいて、Starshipの生産能力を大幅に向上させるための新施設「Gigabay」の建設計画を発表しました。この施設は年間最大1,000基のStarship製造を目指すものです。また、Starbaseの発射台の改修や解体作業も加速しています。一方、フロリダ州のケネディ宇宙センターLC-39Aでは、新しいStarship用発射台が設置され、フロリダからの打ち上げは2026年を目標に進められています。

www.nasaspaceflight.com

FAA、政府閉鎖による人員不足で商業ロケット打ち上げを夜間に制限

米連邦航空局（FAA）は、政府機関の閉鎖に伴う航空管制官の人員不足を理由に、商業ロケットの打ち上げを現地時間の午後10時から午前6時までの夜間に限定する命令を出しました。この措置は航空交通への影響を最小限に抑えるためのものですが、SpaceXなどが計画する打ち上げスケジュールに影響を与えています。

space.com

11月12日夕方、南西の低空で水星と火星が接近

2025年11月12日の日没後、南西の低い空で水星と火星が並んで見える天体ショーが起こります。観測のチャンスは日没から約1時間以内で、地平線が開けた場所での観測が推奨されます。水星は火星の左下に位置し、翌日には火星の右側へと移動します。

spacenews.com

米下院議員、NASAゴダード宇宙飛行センターの施設閉鎖に中止を要求

米下院科学委員会のゾーイ・ロフグレン上級民主党員は、政府機関の一時閉鎖中にNASAゴダード宇宙飛行センターで進められている研究室や施設の閉鎖・統合を即時停止するようNASAに要求しました。特に、数十億ドル規模の「ローマ宇宙望遠鏡」ミッションに不可欠な推進研究室が影響を受けており、計画の遅延や失敗のリスクが懸念されています。ロフグレン氏は、議会の承認前に予算を先行執行し施設整理を進めることは違法である可能性を指摘し、監察官（OIG）による調査を求めています。